近美にて

東京国立近代美術館「所蔵作品展 近代日本の美術館」3月〜5月後期展示を拝見してのメモ。

第1章-1 明治・大正期の美術 文展開設前後

石井柏亭「草上の小憩」。冬の光景。四人の少年少女が坐る。前の少女はテブクロを着けている。こうした油彩洋画の中で毛糸?のテブクロはあまり見かけなかった。
小杉放菴「水郷」と和田三造「南風」の並びは漁師、南薫造「六月の日」と太田喜二郎「新緑の頃」の並びは農耕、斎藤豊作「夕映の流」は牧畜と農水省的なコーナーあり。その近くに辻永「リンゴ咲く」と安井曽太郎「春の家」の花咲く庭の農家二点。南、太田、斎藤の並びは点描の点が大きくなっていったような。

第1章-2 明治・大正期の美術 大正のヒューマニズム

日本画ガラスケースに静物画二点、下村観山「筍図」と富取風堂「静物」。後者画中の白菜の葉脈が凄くリアルそうに見えた。岸田劉生「道路と土手と塀(切通之写生)」は出陳率が高くて何度も見ているが、そのたびに自分が虫になって風景を見ているような気がしてくる。

第2章-1 昭和戦前期の美術 都市のなかの芸術家

イヴ・タンギー「聾者の耳」は視覚から見る者の脳の一部がぐにゃりと歪曲しそうな画。隣りには小牧源太郎「願望 No.1」。岩楼の洞内を探険したい。小牧源太郎の作品はまとめて見たい。怖いけど。この二作のあと、暗色の北脇作品でも見るとホッとする。北脇昇「空港」と三岸好太郎「雲の上を飛ぶ蝶」は空中もの。
石垣栄太郎の作品、まえにここで見たのは画面いっぱいの「腕」だが、きょうの「二階つきバス」はオバサンの太いふくらはぎと尻が主役。
長谷川利行「鉄工場の裏」「タンク街道」、小野忠重「工場街」はインダストリアルもの。隣りには織田一磨「画集新宿」から都会風景のリトグラフ二点。次コーナーには前田寛治のパリっ子?の「労働者」がいる。

特集コーナー:パリの街角へのまなざし

写真と油彩、レジェもあるよ。

版画コーナー:浜田知明

「初年兵哀歌」は各地でよく展示される。ほか「狂った男」「噂」「カタコンベ」が印象に残る。「カタコンベ」の聖母?子像が奇妙に見えた。

写真コーナー:岡上淑子

初めて見たがとても興味深かった。「室内」「人形師」「終曲の午後」「閃光」は絵葉書でほしい。「終曲の午後」の手が印象に残る。

第2章-2 昭和戦前期の美術 日本画・洋画の成熟

高村光太郎の木彫「鯰」はヒゲが無いが、近くに並んだ石井林響「野趣二題(池中の舞)」にはヒゲつきの鯰がいた。徳岡神泉「菖蒲」は造花の妙。
日本画美人画)。北野恒富「戯れ」の画面下半分には写真機を持つ女性、上半分には緑葉。川崎小虎「萠出づる春」は黒髪を梳る女性、画面のほとんどは白い花と緑葉でうめつくされる。ほんのり紅をさす。
小出楢重「蔬菜静物」は持ち帰って泥濘部屋に飾りたい。△にカットしたスイカがポイント。隣りの小絲源太郎「惜春賦」は江戸時代の洋風画のような雰囲気。青花の花瓶がポイント。

第3章 戦時と「戦後」の美術

赤の麻生三郎「自画像」に緑の松本竣介「並木道」が対照的。
戦争画コーナーの鶴田吾郎「神兵パレンバンに降下す」では広い空に多数のまっ白い落下傘。小牧「願望 No.1」にも落下傘が描かれていたような。正面の古沢岩美「餓鬼」も一種の戦争画か。

第4章 1950-60年代の美術

中村岳陵「気球揚る」を前にして、日本切手カタログを思い出した。展示はじめのほうで土田麦僊「舞妓林泉」も見ていたし。きょうの出陳品中ほかにも切手化された作品が複数あり。

第5章 現代美術−1970年代以降

ギャラリー4 現代の版画−写真の活用とイメージの変容