図像分摂取/絵葉書日乗 近美にて

先日、所蔵品ギャラリーを拝見した。そのメモ。

所蔵作品展 近代日本の美術

http://www.momat.go.jp/Honkan/permanent20061021.html
太田喜二郎「桑つみ」、中沢弘光「まひる」を見て、日本の被りものの基本は手拭いと笠、と思う。石井柏亭「草上の小憩」の二少年、ひとりは学生服に学帽、もうひとりは和服にお釜帽。後期には鳶職人の組織が消火活動をしている図、小林古径「加賀鳶」。前田藩江戸本郷の屋敷お抱えの消防団。独特のユニフォームを着ていたとのことだが、実物が残っていたら見てみたい。
梅原龍三郎「ナルシス」の構図に感銘を受けた。これを参考にアナタも自室で気軽にナルシスになろう。岸田劉生、ボウシを被った「B.L.の肖像(バーナード・ リーチ像)」、安井曽太郎「松原氏像」「藤山氏像」はメガネくん*1川端龍子「盗心」はいいなあ。岸田の「古谷君の肖像」を見て、写実的に力士の肖像を描いてほしいと思った。雅山の胸像とか。
瑛九「赤の中の小さな白」はミステリアス。佐伯祐三「パリ雪景」は廃墟のようなディストーション。好きな国吉康雄「秋のたそがれ」と並べたい。
特集コーナーは《安井曽太郎》。ボブカット、赤いローウエストのワンピースを着てピアノにもたれる「少女像」が気に入った。泥濘部屋にお迎えしたい一枚。

左は少女のお靴(とピアノの足)。彼女の足もいずれ「金蓉」さんのような靴*2をはくようになるのだろうか。後期を見に行ったら大沢昌助 「岩と人」のオレンジ色の服を着た少女の足うらをチェックせねば、と思っていた。右端、屋外で日焼けしています。服の色と照応。
版画コーナーの特集は《メキシコの夢─北川民次、竹田鎮三郎、利根山光人》。おもしろいテーマ、興味深く拝見。北川の油彩は何度か見る機会があったが、版画は初めて。「メキシコの浴み」は魚と植物も御一緒に。「紫の花」は絵葉書にしてもよさそう。
日本画コーナー、〈浴室の美女〉もの小倉遊亀「浴女 その一」「浴女 その二」が隣接していた♪*3 何処か何かに憑かれたような山口華楊「洋犬図」、徳岡神泉「月明」*4は好きな画。
川端龍子の構図がカッコイイ「輸送船団海南島出発」(戦争画コーナー後期)は画面中央に十字と星、左右に月と日。ヘンリー杉本「我々のバス」はドナドナな画、左上に月。麻生三郎「赤い空」は右上に太陽。
細江英公薔薇刑」が数葉。都写真美術館の企画展「球体写真二元論:細江英公の世界」が楽しみだ。
豊福知徳「立像」「STRUTTURA '67 II」は表面のノミ痕を見ていたら気が遠くなっていく。後品は真上からのぞきこんで見たい。
中西夏之の耳じゃなくて「韻」はサンドストーム、猫舌的触感。つぎの階に下りるとスグ、銀色アルミニウムの巨大な耳、三木富雄「EAR」が迎えてくれる。この所蔵品展で何度も見ている作品だが、いつもとは別の場所に設置されている。きょうは違った角度から眺めることになって、耳が顎のせしている横顔に見えた。
対面の草間彌生「冥界への道標」には銀色の靴が(凡の数えたところでは)十四足使われている。冥界まで何足の靴を履きつぶすのか。
岡崎乾二郎寿限無のような長い題名の作品二点あり。好きな画。配色濃淡、視覚からいろいろなフレーバーを味わえる。フルーティーな香りも漂ってきそうな。ジャム好きな泥濘部屋に持ち帰りたい作品。
1950年以降、現代美術の作品は、表面の質感が楽しめた。光沢とか凹凸、具材のウネリとか。

写真の現在3 臨界をめぐる6つの試論 Photography Today 3: Resolution/Dissolution

http://www.momat.go.jp/Honkan/PhotographyToday3/index.html
伊奈英次WATCH」「COVER」がおもしろかった。

ミュージアムショップにて

絵葉書を購入。たぶん新商品。太田聴雨「星をみる女性」1936年。スターゲイザーくん、天体嗜好症ちゃんとの交信に最適。もちろん普段づかいにもバッチリだ。
参考:この画の部分。
絵葉書でほしかった物件なので、すごくうれしい。ありがとう近美! 国吉康雄「秋のたそがれ」、古賀春江「観音」、安井曽太郎「少女像」も発行希望です。

*1:東博本館の近代美術の間でもメガネくん、安井「深井英五氏像」が展示されている(11-21〜12-17)。

*2:ハイヒールの洋靴だけど、服はチャイナドレス。

*3:東博本館の近代美術の間では小林古径「出湯」が展示されている(11-21〜12-17)。

*4:この町の月は大きひですね(……)気に入ってしまいました。