横浜美術館にて
じぶんの誕生日企画その二。師走の某日、横浜美術館で企画展と常設展を拝見した。以下、とくに印象に残った品や雑感。
企画展 開館15周年記念「失楽園:風景表現の近代 1870-1945 Paradise Lost: The Politics and Landscape 1870- 1945」(2004年10月9日〜12月12日)
§1 近代都市パリの形成と風景表現
ルドン「薔薇色の岩」「風景」、モーリス・ドニ「森の中の道」がよかった。
§2 帝都東京の形成と風景表現
- 帝都東京の諸相と多様な表現
- 南画の再評価??新南画の興隆
- 戦前期プロレタリア美術運動の終息とシュルレアリスム絵画の勃興
前半は萬鐡五郎「仁丹とガス燈」や横堀角次郎「真夏の赤土風景」、村山知義「赤い大地」*1など。後半のプロレタリアとシュルレアリスムコーナーは、展示全体のなかでも好みの作品が集まっていて、特におもしろかった。
柳瀬正夢の表現主義ものとプロレタリアもの(太田螢一を連想)は、まとめて見たい。板橋区立美術館と武蔵野美術大学の所蔵品が多かった。「表現主義的風景 家裏の坂道」「表現主義的風景 坂道」「石川島」、プロ美ポスターなど出陳。
シュルレアリスムコーナーの作品をメモしておく。いま・ここにこそある風景たち。
§3 ニューヨークと地方??アメリカ風景写真の展開
好きなのは摩天楼もの。ルイス・W.ハインの高層ビル建築現場の写真を見ることができた。絵葉書でもいくつか持っている。
§4 近代都市パリの成熟と「地方」への関心
- 「美しき時代 (ベル・エポック)」と「狂騒の時代 (レザネ・フォル)」
- 万国博覧会とフランスの植民地風景
- 不穏な視覚(アンキシャス・ヴィジョン)の表象??シュルレアリスムの風景表現
- 都市の陥穽??シュルレアリスムと風景写真
このセクションのシュルレアリスム作品に関連した品じなが、同時開催の常設展で幾つも見られた。
§5 帝都東京と作られた「地方」
- 植民地の風景??朝鮮の郷土色と朝鮮美術展覧会
- 植民地の風景??台湾の郷土色と台湾美術展覧会
- 満洲あるいは大陸の風物への眼差し
- 見いだされた楽土??報道写真以後
このセクションに〈パラソルをさして〉あり。
- 金周經「北岳山を背景にした風景」1927年、韓国国立近代美術館/蔵
- 中央下に赤いパラソルをさした白い服の女性の後ろ姿。白っぽい建物と緑の植物の風景。
- 名取洋之助「朝鮮」(モノクロ写真)、1936年
- 三人の女性。二人はパラソルをさして、一人は閉じている。彼女らの持ち物は籐のバスケット、ハンドバッグ、風呂敷包み。
女学校ものの洋画、陳澄波「新楼」1943年もおもしろく見た。緑蔭の瀟洒な女学校にセーラー服の生徒。夏服の上着は白、カラーとスカートは青色。校舎は赤い屋根に白い壁、上部がカマボコ型の大きい窓。
§6 大量殺戮と廃墟??第二次世界大戦末期の戦争風景
このセクションのジョン・アームストロング「復活祭の分析」は北脇昇の画と並べて見たい。向井潤吉「影(蘇州上空にて)」が印象に残っている。
日本の戦争画で、陸軍美術協会/編『聖戦美術』と大日本海洋美術協会/編『海軍美術』が並んでいた。当時、陸海で美を競っていたのだろうか。
全体をとおして??日本の作品のボリューム、品ぞろえは満足、おもしろく拝見した。外国というより欧米の作品については、フランス中心で少少もの足りなく感じた。今後、風景画の展示を見るなら、ほかの国を中心にした展示が望ましい。
ポスターやチラシでゴシック体が多く使われていた。展示会場のセクションごとの解説板テキストもゴシック体で書かれていた。見易く、統一感があってよかった。
失楽園の入場割引(id:kashoh:20041113)。確かにありました。
常設展
横浜美術館は一年に三期の常設展あり。凡は三期とも見ることになった*3。毎回いろいろな作品が並んで、とても楽しい。来年度も期待している。
日本画における幻想的な風景 Factastic Scenes in Modern Nihonga Painting
大きめの画面で花鳥風月をモチーフに。
現代ガラスの不思議な形 Fantastic Forms in the Contemporary Glass
いままで積極的にガラス作品を見てこなかったが、ここで思いがけず、おもしろい品じなを見せてもらった。
バーティル・ヴァリーンの〈ボート〉シリーズのひとつ「独居」1989年、ダナ・ザメチニコヴァのガラス板を約11枚重ねた「扇・思い出」1992年、など印象的だった。
変容するイメージ-シュルレアリスムの絵画と彫刻 Metamorphosis of Images: Paintings and Sculpture of Surrealism
ルネ・マグリットのブロンズ作品「レカミエ夫人」、マックス・エルンスト、ジョゼフ・コーネルのコラージュを見ることができた。
版画のなかの幻想的な世界 Visionary World in Prints
柄沢齊「肖像 XXIV(アルフレート・クービン)」1985(昭和60)年、木口木版??背後がこわい…… そして、小作青史「風車の子供」1969(昭和44)年、リトグラフ??コドモの名前は“ルリヲ”だよね。