東博にて
企画展「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」
展チラシも館サイトの案内ページも、はてなダイアリーの展ブログも読まず、予備知識ほとんどナシで会場に入った無謀者・凡の印象にのこった品じなをメモ。「第3章 エキセントリック」「第4章 江戸の画家」に好みの作品が集まっていた。
第1章 正統派絵画
第2章 京の画家
長沢芦雪「幽霊図」。細くつり上がった目は幽霊の基本顔か。腰から下を大胆に省略。芦雪は「神仙亀図」もあり。亀は画面下方に描かれることが多いように思うが、この画の亀は上方それも神仙より上に居る。
円山応震「駱駝図」浮世絵版画でないラクダ図、それも掛幅は見たことがなく吉。源き「猛虎図」顔は怖いが毛繕いのポーズがカワイイ。虎図は幾つか展示されていたが、片山楊谷「猛虎図」は本展で〈大猛虎トーナメント〉があるなら、かなり有力な感じ。虎と龍を混合したような怖面。四股名は〈猛虎龍〉としよう。
南蘋派好きの凡にはうれしい岩井江雲「三千歳図」。おめでたい桃の図。枝葉果実の曲線と周縁から中心への濃淡が目にここちよい。
第3章 エキセントリック
伊藤若冲「雪中鴛鴦図」枝の雪が凡にはポイント。同「鷲図」は浪の表現がカッコイイ。
若冲「鳥獣花木図屏風」は本展の目玉作品。弱肉強食や食物連鎖とは無縁の、安穏で平明あざやかな動物の楽園。右隻は四足獣、左隻は鳥類。右の白象vs.左の鳳凰という構図か。手長猿と獏がカワイイ。この図をフェルトなど布のコラージュで再現してもおもしろそうだ。
伝曽我蕭白「唐人物図」は韓信の〈股くぐり〉とのこと。はじめて見る画題だ。画面右上落款、署名の書体がカッコイイ。蕭白「寒山拾得図」の拾得は手のツメ長くするどい。寒山のツメはふつう、だけど顔がオバサンぽい。蕭白の浪や水しぶきの表現は幾つかの作品からイメージできるが、彼の描く爆発シーンを見てみたい。
第4章 江戸の画家
凡にとって、この展最大の収穫は、伝河鍋暁斎「閻魔と地獄太夫図」! 企画展「国芳 暁斎 なんでもこいッ展だィ!」*1では暁斎「地獄太夫と一休」を見ることができた(id:kashoh:20050108。この企画展、もう一度見たい)。この閻魔*2の図では浄玻璃の鏡という小道具が使われていて、太夫は鏡に映っている。たいてい太夫の着物に描かれる画像の立場の閻魔だが、この図では太夫の方が鏡像になっていて、立場が逆転している*3。閻魔が地獄太夫柄の装束を着ることは無いな。「地獄太夫」大集合の展示が見たい。地獄太夫の着せ替えフィギュアがほしい。暁斎による色いろな地獄風景を描いたキモノ付きの。一休と閻魔もオプションで。
柴田是真「山水図」は漆絵。うんと近接してみたい。同「白衣観音図」は夏に掛けたいクールな画面。ことし東博で見た狩野一信の仏画を思い出す*4。
ここで椿椿山「鯉魚図」を見るとは。意外だけど吉。表装も涼しげ。
第5章 江戸琳派
いまだ琳派に対する苦手意識は払拭されていない……。
鈴木守一「秋草図」は、まず描表装*5がポイント。本図から上方に舞い上がった蝶がいい!下方の花の色と対照的。
鈴木其一「漁樵図屏風」と「飴売り図」は、水辺で山路で町中で〈働くおじさん〉もの。展示作中では少数派の画題か。
光と絵画の表情
世はライトアップ流行りだな。“光によって変化する作品の表情を楽しむ”コーナーだが、変化のはやさについていけなかった。
長沢芦雪「白象黒牛図屏風」の象も牛も、いままで見たなかで最大の図(たぶん)。黒牛の前にちんまり坐る白い犬、つぶされないかと心配になる。
呉春・松村景文「柳下幽霊図」は描表装、柳が描かれている。人物の視線が定まっていないのが怖い。丸顔の幽霊って見ないな。
物販
絵葉書は40種類。Tシャツ、クリアファイルなど定番品のほか、ルービックキューブやまんじゅうが異彩を放っていた。
「若冲と江戸絵画」展コレクションブログにて、展オリジナルポストカード人気 NO.1はどれ?“販売枚数ランキング 1位 と 2位 を予想してください。”あり。販売16/40件(http://www.jakuchu.jp/info/card.html)のなかから、上位2件を選ぶ。凡は可愛い画で、販売予想 3-12。No.3「猛虎図/伊藤若冲」と、No.12「鳥獣花木図屏風/伊藤若冲」。
絵葉書でほしい作品
泥濘部屋に掛けたい作品
泥濘部屋には手が出ない書籍
ザ・プライス・コレクション
ケタが違う……。
親と子のギャラリー「プライスコレクション 若冲と江戸絵画 あなたならどう見る?ジャパニーズ・アート」
ジャパニーズ・アートといっても動物の画がメイン。入ってすぐに中住道雲「松竹梅群鳥八十八寿之図」。オーデュボンの鳥類図譜を連想する。これのみ明治時代、ほかは江戸時代の作。森徹山「仏涅槃図」もいい。象と獅子は菩薩さまを載せる動物だから?率先して嘆き悲しまねば。仰向けに転がってオーバーな駄々っ子ポーズ。(この二点を泥濘部屋に飾りたい。)
岩絵具、紙や絹の着色サンプルを置いたコーナーがあった。「電気石 ブラックトルマリン」ってカッコイイな。絵具や色見本、画材や表装材料の紹介は常設展示してほしい。
〈親と子のギャラリー〉の題材が《動物》というのは、お子様ランチの定番メニューだなあ。でも見せかたや解説文、鑑賞ツール、参加型企画など至れり尽くせりのプログラムありで、盛りつけや味つけは年ねん変化進歩している。
展示スペース(平成館の企画展示室)は狭い。畳の腰かけがあっても、狭い通路の真ん中に置かれていたら坐りにくい。スペースが小さいと落ちついて居られず、さっさと次の人たちへ回転させないと悪いかなとおもったり。〈親と子の〉と来室単位は大人一人より体積をとる(コドモは小柄だけどモーションは大きい)のだから、広いスペースが望ましい。
日本の考古(平成館)
先日から見たくおもっていた土偶に会いに行った。いいなあ土偶、スウィングするよ。オフィシャルな表情の埴輪より、造り手の衝動があらわれているような。
資料の配置されたガラスケースは〈ヴンダーカマー〉ってこんな感じ? とおもわせる。土偶と縄文式土器、鏡は後日ゆっくり再見したい。
暮らしの調度(本館)
染付のケースがおもしろかった。「五十三次図大皿」「日本地図大皿」は、いまなら〈山手線大皿〉〈東京の市区町村地図大皿〉が造られるか。「鶴亀図大皿」の妙に闘志を燃やしていそうな亀に注目した。
浮世絵と衣装(本館)
浮世絵
夏の風物は傘、七夕、団扇。
〈洗濯もの〉物干し場の絵がおもしろかった。奥村政信「物干し場美人」と歌麿「物干し」あり。歌麿の画は三枚に女性八人、コドモのキモノを干す母親?にまとわりつく小児ひとり、欄干から身をのり出す白猫一匹。
ことしも団扇絵の展示があるだろうか。去年の団扇絵が並んでいた期間、展示を見ていた凡は知らない人から唐突に「今回の展示はすごくいいねぇ、じぶんは展示替えを毎回欠かさず見てるけど、特にいい」と話しかけられたのだった。凡も、とてもおもしろく見て廻っていたので、同意した。
印籠
「蝉蒔絵竹鞘印籠」「蘆亀蒔絵印籠」に注目。後者は籠の根付つき。いままで印籠ばかり見ていて付属の根付はほとんど目に入ってなかったことに気づく。
根付
「白澤牙彫根付」「黒奴木彫根付」に注目。黒人は太鼓を叩いている。リズム感がいいのか。
ミュージアムショップ
手ぬぐい二本めを購入。浅葱色の地に花兎文。地色が涼しげなのはいいのだが、ウサギの目がコワイ。最初は金魚柄で、次はウサギにしようと決めていた。秋にもう一本、あの柄を入手したい。本館《浮世絵と衣装》に展示されていた「被衣 紺絽地松皮菱花丸模様」柄の手ぬぐいがほしい。伊藤若冲「松樹梅花孤鶴図」も。
*1:会場だった東京ステーションギャラリー、はやく再開してほしい。
*2:円いピアスをつけている。
*3:と後日、町田市立国際版画美術館の企画展「明治の浮世絵 歌川派の巨匠 芳年と国周」にて、両巨匠の「地獄太夫」を見ながら思った。
*4:特集陳列「幕末の怪しき仏画―狩野一信の五百羅漢図」。
*5:描表装の特集展示が見たい。