近美にて

東京国立近代美術館にて企画展「アジアのキュビスム 境界なき対話 Cubism in Asia: Unbounded Dialogues」(2005年8月9日〜10月2日)と所蔵品展を拝見。企画展は期末が迫ってようやく行けた。

企画展「アジアのキュビスム 境界なき対話 Cubism in Asia: Unbounded Dialogues」

キュビスムは見慣れていないし、アジアの20世紀美術にも疎いが、見たかった展示。国別ではなく、画題別に陳列されていた。
《第1章 テーブルの上の実験》はそうでもなかったが、《第2章 キュビスムと近代性》《第3章 身体》《第4章 キュビスムと国土(ネイション)》と進むにつれて、画面のアジア度が高くなっていった。随所に見たことがある日本の作品。
《第2章 キュビスムと近代性》の〈大都市(メトロポリス)と国際都市(コスモポリス)〉〈機械時代(マシーン・エイジ)の芸術〉コーナーがよかった。小洒落た都市生活と機械の動力とプロレタリアが同居。蕗谷紅児「巴里の散歩」(1926年)も並んでいたらよかったな。
《第3章 身体》のジョージ・キート「反映」と古賀春江縁側の女」は絵葉書ほしい! 後者は和服、縁側、松でキュビスムだよ。「観音」(1921年)とセットで。どちらも近美所蔵作品だから、館オリジナルで是非。既発ですっかり御馴染となった「」「月花」とは別の面も紹介してほしい。
《第4章》の「壷と女たち」って韓国の海女さんか? 古賀春江キュビスムな「海女」(1923年、石橋美術館/蔵)*1を思い出した。

会場を出た処にある物販コーナーには図録のみ。絵葉書販売用の箱(葉書サイズに枠で区分されている木箱)は出ていたが、中身の品は館所蔵品の物件。展オリジナルの絵葉書か?と期待してのぞきこんでガッカリ。
絵葉書が発行されてなかったのは、すごく残念だが、展示はとてもおもしろく、見ることができてよかった。今後、アジアの近代絵画の展示も要チェックだ。

昼食

いったん館の外へ出て食事を取る。館内のレストランは入る気にならない。食事に時間とコストをかけずに、ここは展示に集中したい。改装前にあった軽食コーナーを復活してほしい。

所蔵品展「近代日本の美術 Modern Japanese Art from the Museum Collection」

展示替えで、初見の作品もいろいろ見ることができた。

I-1 明治・大正の美術 文展開設前後

山下新太郎「靴の女」(1910年)はブリヂストン美術館の企画展「山下新太郎展」で見た好きな絵。絵葉書ほしい。

I-2 明治・大正の美術 大正のヒューマニズム

鏑木清方「墨田河舟遊」(1914年)左隻に描かれた舟で、島台に盛られた菓子に注目。紅白まんじゅう、紅白ストライプの飴?、松の根元に丸太型の干菓子など。平福百穂「荒磯」(1926年)が出陳されていると、つい浪の描線・彩色に目がいく。
不思議な背景にブドウを手にした「好子像」(1916年)は好きな絵。岸田劉生の銅版画の隣りにあり。

II-1 昭和戦前期の美術 都市のなかの芸術家

企画展に関連してか、キュビスム系の作品が多めだったような。古賀春江「花」は初見。
1930年代日本のシュールレアリスムの並びがよかった。小さい、うすい人物像に注目。

  • 浜田浜雄「ユパス」(1939年)
  • 北脇昇「最も静かなる時」(1937年)
    • うすれゆく少女像あり。たぶん初見の北脇作品。
  • 浅原清隆「多感な地上」(1939年)
    • 女性(年齢不詳)の小像あり。自転車に乗っている。企画展「地平線の夢 昭和10年代の幻想絵画」のチラシ画像だったような(チケットだったか)。

現代美術フロアの丸山直文「Garden I」(2003年)も並べたい。コドモ(?)の小像あり。レモンイエローとピンクのクリーミーな地面、画面上下に緑の帯、寂寥感。国吉康雄「三世代」(1918-20)の背景には、水上に小さくボートに乗る人。

特集コーナー 中村不折

西欧19世紀末〜20世紀初頭の泰西名画との関連がおもしろい。
「養身(長養)」(1915年)は翁の耳環と腕輪に注目。「廓然無聖」(1914年)の達磨はギリシアの哲学者のようだ。洋画で達磨の立像は初見かな。「始制文字」(1924年)エジプト服の翁が謎。古代文明の文官サミットか? にしても手前でニワトリにエサやりしている男児は?? 「華清池」(1925年)は、いかにも〜な背景とポーズの裸体像。東博に展示されているような古い鏡が実用されている!

II-2 昭和戦前期の美術 日本画・洋画の成熟

日本画ガラスケース展示には〈浴室の美女〉*2シリーズが二点。一点は初見。湯上がりの童女姉妹の画「夕」もあり。ワカメちゃんカットの洗い髪。シリーズ充実。特集コーナーの中村不折「華清池」もシリーズに入るかな。
太田聴雨「星をみる女性」(1936年)もあり。好きな画。

版画コーナー

谷中安規。「幻想集」、画もテキストもいいなー。風船画伯の自画像を絵葉書化してほしい。

III 戦時と「戦後」の美術

凡にとっての〈日本n大-宏*3〉の一人、中村宏さんの「基地」あり。隣りは山下菊二「またぐ」。うわーキモチワ……(ほめてる)。向かいの壁には浜田知明「初年兵哀歌」二点。

たっぷり3階分、見応えあった。次の展示も楽しみだ。

パラソルをさして*4

きょうの企画展、所蔵品展で見た作品。

  • 企画/東郷青児「パラソルをさせる女」(1916年)ひらいた虹色のパラソル
  • 常設/中沢弘光「夏」(1907年)ひらいた白いパラソル
    • 何度も見ていて気になっていること――描かれている女性の顔は大きい?
  • 常設/国吉康雄「三世代」(1918-20年)たたんだ黒いパラソル 年長の女性が持つ
    • すぐ隣りにはハンマーを持つ労働者の腕のアップ、石垣栄太郎「腕」(1929年)。
  • 常設/中村不折「盧生の夢(邯鄲)」(1929年)たたんだ赤い唐傘(晴雨兼用か雨傘?)

見落とし、この他にもあったかもしれないが4品は大漁、バリエーション豊富だった。

*1:ブリヂストン美術館「絵のなかのふたり」展で見た(id:kashoh:20050724)絵。

*2:江戸川乱歩「魔術師」より 浴室の美女 [DVD]」より。

*3:荒俣さんとか高山さんとか。現在、中村さんと合わせて〈日本三大-宏〉。

*4:マリア様がみてる 11 パラソルをさして (コバルト文庫)」より。