版画美術館にて
最終日ちかくになって、ようやく企画展「暮らしの版画 毎日を楽しむために」と、常設展示室の版画いろいろ小特集拡大版「小さい版画・大きい版画」を拝見した(町田市立国際版画美術館、2005年6月25日〜9月25日)。企画展の思い出を以下に記す。
I. 祈り
仏教版画
印仏いろいろ。信仰ご利益のスタンプ集。
II. 民衆
フランスの民衆版画
ダメ夫改良器「奇跡の蒸留器」&悪妻バージョン「奇跡の粉挽き器」の図。この器械を通れば、飲む打つ買うDVも浪費や遊び癖も治まって、模範的な夫妻が出来上がるハズ。エピナール最高!
「あやつり人形 道化師」は絵葉書(id:kashoh:20040623#p1)が発行されている。この道化師の顔を見て、八代亜紀を連想した。
「着せ替え人形」と「着せ替え人形 軍服」。前者は一紙に紳士淑女をペアで掲載、後者は男性の軍人のみ。紙製フィギュアでコスプレが楽しめる。衣装デザインも時代がかっていておもしろいし、グッズとして販売されたら人気でそう。
「凧 月を征服しに行こう」。満月に梯子を掛けて遠征するのは、帽子からしてトルコの人?
ポスター
ヴァロットン描く人物の目がかわいい。
III. 書籍
IV. 報道・諷刺
ナポレオンを主題とする民衆版画
「ペスト患者に触れるボナパルト」にびっくり。
西南戦争を主題とする錦絵
フランスがナポレオンなら、日本代表は西郷隆盛。芳年「西南鎮静記」は男前に描いてあるな。小林清親の新聞錦絵って異色。九州の女隊の図、四代歌川国政の西郷星の図もおもしろかった。前期展示の橋本周延「西郷虎狼狸予暴魔茂痢奔損」、芳年「鹿児嶋婦女子乱暴之図」も見たかった。
フランス19世紀の風俗諷刺画
フランス19世紀の政治諷刺画
グランヴィル「自由の女神征伐のための大十字軍」(石版、縦270mm、横3625mm!)が見応えあった。異形の生きもの(含-ヒト)の長蛇の列。ヒトよりも乗り物にされている獣たちに目がいく。今回の展示にはグランヴィルの木口木版、鋼版、石版が出揃った。できることならグランヴィルには群仙図や蝦蟇鉄拐図を石版でオーダーしたい。
展示室から出て
絵葉書でほしい作品
- 民衆版画(エピナール)「救いの聖母・七つの悲しみの聖母・ロザリオの聖母・スカプラリオの聖母」
- 民衆版画(エピナール)「奇跡の蒸留器」
- 民衆版画(エピナール)「奇跡の粉挽き器」
- ブラント『阿呆船』各種
- アメデ・ヴァラン『蝶』各種
- グランヴィル「自由の女神征伐のための大十字軍」四枚組くらいで
夏休みに来館するコドモらにも判りやすいようにか、セクションごとの概説板の文字が大きく、作品ごとに解説文がつき、どちらも解りやすく書かれていた。書体はゴシック体で読み取りやすかった。
“民衆画”と一言にいっても幅広い地域、時代、ジャンルにわたる。その中から、バランス良くスマートに選択構成されていたと思う。中国の年画、グランヴィル、アメデ・ヴァラン(!)など、うれしかった。これから、エピナール版画も要チェックだ。
疲れずに楽しく見て廻れる分量、配置だった。出品リストが配付されたので、現地でのメモ取りはラクラク、帰宅してからの回想もヒタヒタ。観覧料(一般400円)は大変お得だった。
ありがとう、町田市立国際版画美術館。次回の企画展「浮世絵モダーン 20世紀伝統木版画の隆盛」も、すごく期待している。