近美にて

東京国立近代美術館の所蔵品ギャラリー「所蔵作品展 近代日本の美術 Modern Japanese Art from the Museum Collection」(2005年6月7日〜7月18日)を拝見して印象的だったもの、簡単なメモ。

第1章−1 明治・大正期の美術 文展開設前後

  • 「大原御幸」下村観山、1908、彩色・絹本
    • 企画展「琳派 RIMPA」で見て以来、観山描く植物の色合い肌合いが気に入っている。

パラソルをチェック。画面は全員が女性、和装。

  • 雨傘を閉じて杖がわりにした老婆
    • 「おうな」和田英作、1908、油彩・キャンバス
  • パラソルをさして
    • 「夏」中沢弘光、1907、油彩・キャンバス
  • 笠の早乙女
    • 「田植」太田喜二郎、1916、油彩・キャンバス

書く少女と読む婦人。どちらも外国で描いたものか。

  • 「少女」南薫造、1909、油彩・キャンバス
    • 屋外、左斜め後ろから見た姿。半袖の夏服。
  • 「窓際」山下新太郎、1908、油彩・キャンバス
    • 屋内、右斜め後ろから見た姿。長袖の服にショールを掛けている。

「おうな」「夏」「少女」「窓際」は、何度かこのコーナーで見た作品。

第1章−2 明治・大正期の美術 大正のヒューマニズム

  • 静物」富取風堂、1921、彩色・絹本
    • オランダの静物画を日本画風に掛け軸にしたような。鳥の骸二体など。

徳岡神泉の二点をおもしろく見た。

  • 「狂女」Mad Woman 徳岡神泉、1919頃、彩色・絹本
    • 幽霊画のような雰囲気。ドンヨリ、ボォーと存在感あり。
    • 去年このギャラリーの版画コーナーで見た伊東深水「屋上の狂人」(1921、多色木版・紙)と並べて見たい。
  • 「蓮」徳岡神泉、1925、彩色・絹本
    • こちらも暗く沈んだ異色の蓮図。

第2章−1 昭和戦前期の美術 都市のなかの芸術家

  • 「制作」岡本唐貴、1924、油彩・デトランプ・綿布

シュールレアリスム。並んでおもしろい品。

  • マルスリーヌ・マリー(『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』より)」マックス・エルンスト、1929−30、コラージュ・紙
    • 後方に人魚(男?)を抱えた男。
  • 「コラージュA」北脇昇、1938頃、コラージュ・方眼紙
    • 子どもの顔、着物に描かれた魚に目がいく。

上空。

  • 「空の訣別」北脇昇、1937、油彩・キャンバス
  • 「雲の上を飛ぶ蝶」三岸好太郎、1934、油彩・キャンバス

ほか、国吉康雄「二つの世界」、野田英夫「帰路」、佐伯祐三藤田嗣治、海老原喜之助、前田寛治ら洋行の画家たちシリーズもおもしろかった。

特集展示 絵の中の歴史

  • 「燈籠大臣」吉村忠夫、1936、彩色・絹本
    • 近接して見ることができるようなディスプレイになっていてよかった。金銀の装飾着色が確り見えた。
  • 「重成夫人」植中直斎、1942、彩色・絹本
    • 装束の絵柄が盛りだくさん。

〈歴史〉画というより、人物の意匠や舞台の装飾に目がいってしまった。

第2章−2 昭和戦前期の美術 日本画・洋画の成熟

  • 「海女」福田豊四郎、1950、彩色・紙本
    • 夏だ!潜れ、海女さん! いいなー、ダイナミックな構図。三人の海女さんと三尾のサカナ、緑色の水のなか小麦色の肌に白い足うら〜 これで凡のなかで福田豊四郎は+20ポイント。きょう、いちばん感銘を受けた作品。
  • 隣りはダイナミックな黒い「馬」四頭(吉岡堅二)、茶牛もいるよ山口華楊「耕牛」に、入江波光「霖雨耕牛」。ということで漁業に畜産に農業シリーズか。

絵葉書でほしい、鏑木清方「明治風俗十二ヶ月(六月)」(1935、彩色・絹本)。パラソルをさした袴姿の女学生と、弟らしきセーラー服(白い上着に半ズボン、黒いハイソックス)に麦わら帽の少年が金魚屋に。

写真コーナー 奈良原一高

モノクロ写真。「消滅した時間」"Where Time Has Vanished" から。1970年代アメリカのロード・ピクチャー。見ることができてよかった。ほかの作品もおもしろそうだ。「霊園」の絵葉書ほしい。

第3章 戦時と「戦後」の美術

  • 「犠牲者」津田青楓、1933、油・キャンバス
    • 小林多喜二の獄死によせる。胃の痛くなるような絵だ。モデルは当時の弟子、後のオノサト・トシノブとのこと。

本が描かれた二点。

  • クォ・ヴァディス」北脇昇、1949、油彩・キャンバス
    • 帽子をかぶった後ろ姿の男、閉じた本を小わきに立っている。何度も見ている絵だが、いままで本を意識しなかった。
    • 北脇の自画像も展示されていた。和服姿を描いたエンピツ画。
  • 「ラ・ペ(平和)」内田巌、1952、油彩・キャンバス
    • 頭にショールをかぶった若い女性の横顔、膝の上に本を開き坐っている。

池田龍雄作品。

  • 「巨人」1956、インク、油彩、水彩、色鉛筆・紙
    • 顔面に多眼(20眼くらい数えた)と大きさのちがう一対の耳、二つの口?
  • 「「禽獣記」より見張り」1957、インク、コンテ、油彩、水彩・紙
    • これは初見。陰険そうな鋭角的な外観の工場の前、一体に前後二頭の犬。上半身が合体。

第4章 1950−60年代の美術

森田曠平「鐘巻」(1981、彩色・紙本)。装束、流れる髪、背景に蛇行する曲線と鱗文。顔はしっかり森田顔。絵葉書ほしい。

第5章 現代美術−1970年代以降

メタリック&ブルーの作品がおもしろかった。

  • 「空路 1987-A」「1987−B」清塚紀子、1987、銅版、銅箔他・紙
  • 「SQUARE-92-3〈メタリックの海−ブルー〉」岩本拓郎、1992、アクリルウレタン塗料、メタリックベース・和紙(板に貼付)

特集 瑛九とオノサト・トシノブ

瑛九というと「青の中の丸」くらいしか知らなかった。コンパクトに多技法の作品が集められた今回の展示は参考になった。「旅人」「海辺の孤独」「ともしび」などカラーリトグラフエッチング集「小さい悪魔」、シルバー・プリント「夜の子供達」がおもしろかった。
オノサト・トシノブは○と格闘している。

エントランスにて

当日は企画展「近代日本画の名匠 小林古径展」の期間中で、主に中高年の女性たちで賑わっていた。人込が厭で、そちらは見なかったが、グッズ(=絵葉書)の品揃えだけはチェック。狙っていた「踏絵(異端)図」が絵葉書化されていて、うれしい。東京国立博物館の所蔵品だが(「異端(踏絵)」と題して2004年9月頃に本館で展示。印象に残っていた)、東博では絵葉書化されていないと思う。古径の絵葉書は「いでゆ(出湯)」のみと記憶。

ミュージアム・ショップにて

平成17年度に入って初めて館に来たが、館オリジナルの絵葉書コーナーには新発売が見あたらなかった。ガッカリ。毎年、数点でもいいから新作を用意してほしい。

きょうの所蔵品ギャラリーもおもしろく拝見した。次の展示も楽しみだ。