東京ステーションギャラリーにて
先月の某日、企画展「国芳 暁斎 なんでもこいッ展だィ!」(2004年12月11日〜2005年1月23日)を拝見した。以下、とくに印象に残った品や雑感。
1節 役者似顔絵
暁斎の妖怪引幕は「妖と艶 あやかしとつや 幕末の情念」*1(板橋区立美術館、2003年11月29日〜12月28日)で見て以来。国芳の「むだ書」、好きだな。「浮世絵 アヴァンギャルドと現代」*2(東京ステーションギャラリー、2003年夏)で、前回はレンガ壁の展示室で見たような。
2節 武者絵・風景画
国芳の「宮本武蔵と巨鯨」「鬼若丸と大緋鯉」は三枚続きの武者の幻魚激闘編。町田市立国際版画美術館の企画展「本邦初・勇壮無比 浮世絵 大武者絵展 武者絵二百年の歴史をたどる」*3(2003年秋)で知った画。
国芳「源牛若丸僧正坊ニ随武術を覚図」と暁斎「僧正坊 牛若丸 鞍馬山」の競演がおもしろかった。着眼したのは大天狗・僧正坊のツメ、牛若丸の足袋。国芳の僧正坊の手のツメは長い(足は隠れていて見えなかった)。烏天狗のツメも長い。暁斎の僧正坊は手足ともツメ長かった。烏天狗のほうは、牛若丸とバトル中の戦闘員クラスはツメ短く、僧正坊の側近・幹部クラスになると長く描かれている。強さや階級がツメに表れているのか。両画とも牛若丸のツメは長くなかった。そして、どちらの牛若も足袋を履いている。それも白く、汚れていないところがポイントか。
しかし“武者絵・風景画”って、括りは……?
3節 戯画・風刺画・動物画
猫の国芳、カエルの暁斎。国芳の画にはツメをたてている猫は、ほとんどいなかった。愛らしい猫たち。暁斎の猫は「鳥獣戯画 猫と狸(画稿)」に見られるようなコワイ猫が展示されていた。猫又=化猫なので、ツメを出して邪悪そうな表情をしているは当然か。
暁斎「化々学校」は妖怪の学校の授業風景。河童が日常用語(SHI RI CO TAMA など)のローマ字の綴りをならっている。
影絵もおもしろく見た。
5節 美人画
国芳「近江の国の勇婦於兼」を実見できた。太田美術館の絵葉書*4を持っている。
国芳「四季心女遊 冬」は雪かきをする女性たち、雪像づくりや雪遊びする男児の画。雪景色のシーンなので(?)犬が二頭描かれている。国芳の猫たちは安楽な室内で、ぬくもりの特等席を占めたり、こたつで円くなっていたりするのか。先日*5東博で見た歌川豊国「雪こかし」同様、人物は手袋をつけていない。
暁斎「霊昭女」は美人かつ〈長いツメ、するどい〉。出会ってうれしい作品だ。
そして拝見を楽しみにしていたのは暁斎「地獄太夫と一休」。地獄図(太夫の着物柄)、ダンス・マカーブル(背後の骸骨による歌舞音曲)、片足立ちで踊る一休さん*6と、一作品の中にコンテンツがてんこ盛りになっている。国芳「一休和尚と地獄太夫」の一休さんも片足立ちで踊っている。「暁斎楽画 第九号 地獄太夫がいこつの遊技ヲゆめニ見る図」から、月岡芳年『和漢百物語』の「大宅太郎光圀」を連想する( 右が地獄太夫)。
全体に
構成がよかった。いろいろなテーマの対比をおもしろく見た。展示作品数も適度かつ満足感あり。2005年も、こういった浮世絵の展示を希望。できれば次は芳年メインで。