でこれーしょん べあ はんど
2006年、川崎市市民ミュージアムにて撮影。
図像分摂取/絵葉書日乗 揺らぐ近代
先日、企画展「揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに*1」(東京国立近代美術館)を拝見。
http://www.momat.go.jp/Honkan/Modern_Art_in_Wanderings/index.html
夏頃から楽しみにしていた展。期待どおりの内容だった。後期展示も見に行きたい。
以下、メモ(12月に後期展示も拝見、追記した)。
第一章 狩野芳崖・高橋由一 日本画と洋画の始まり
高橋由一は2004年に見た企画展「日本近代洋画への道」*2で、洋風画と一緒に見たことが強く印象に残っている。金刀比羅宮/所蔵の「鯛(海魚図)」を見ることができてうれしい。「墨水桜花輝燿の景」は墨水を背景に浮き出す桜花。工芸的な絵画だ。「写生帖(瞬間弄写)」は市井の人びとのスナップショット。今和次郎や荒木経惟の仕事を連想する。「捕象図」は掛軸の墨絵に象と西洋人、銃。“捕象”といいながら、象の方が優勢。
芳崖「地中海真景図」水墨の風景画は銅版画アクアチントのようだ。「仁王捉鬼」のカラフルさがファンタジック。アラビアンナイトを連想。
第二章 明治絵画の深層 日本画と洋画の混成
彭城貞徳「和洋合奏之図」がおもしろかった。尺八の二少年とヴァイオリンの二少女が合奏。全員和服を着て座布団に正座している。もちろん場所は畳敷き、障子、床の間の和室。
芳崖や小林清親「獅子図」は唐獅子でなくライオン。石川大浪の「獅子図」と並べて見たい。五姓田芳柳「風俗図屏風」では異国人が角兵衛獅子を見ている。背景の富士山は銭湯のペンキ絵に引き継がれている? 田村宗立「越後海岸図屏風」と二屏風を並べて見たい。
東博所蔵の荒木寛畝、渡辺省亭《迎賓館七宝額下絵帖》花鳥果実の博物画は絵葉書にしたら売れる(送りやすい図柄)と思うのだけど。
川村清雄「村上彦四郎(村上義光 錦御旗奪還図)」は描表装の油彩画だ。写真のようにリアルに描いた掛輻のポートレート、二世五姓田芳柳「陸軍歩兵大尉松崎直臣像」もそうだが、表装も和風/洋風、和洋折衷と揺らいでいる。川村「瀑布(滝)」はいいなあ。油彩、彩色の山水画。白と緑に金色がノーブル。
小林永濯「道真天拝山祈祷の図」は、旧来の日本画で表現したらどんな感じか見てみたい。この画では道真の手のツメが長いのがポイント。展のチラシ、ポスターに大きく掲げられたタイトル画像。“揺らぐ近代”というより“痙攣する”“感電する”といった感じ。凡の頭中では「雷神」*3が鳴り出す。同「七福神」のキュウトな布袋さんはコドモに道を尋ねているのか?
第三章 日本絵画の探求 日本画と洋画の根底
浅井忠「琵琶法師」はモダーンな彩色。いまの洋室に飾っても違和感なさそう。ことしは浅井忠作品を見る機会が多いなあ。1856年生まれ1907年没、ことしは生誕150年、来年は没後100年か。
下村観山「ダイオゼニス」は前に所蔵品ギャラリーで見て気に入っていた作品。江戸時代に描かれた各種「ヒポクラテス」像と並べて見たい。ダイオゼニス足もとの草花が夢想チック。西洋人だからか?隠者でも手足のツメは長く描かれない。白髯はずいぶん長いのだが。西欧でツメを長く描けるのは邪悪な存在だけ? 観山はモナリザ顔「魚籃観音」もスバラシイ。
第四章 日本画の中の西洋
モノに憑かれて
凡のなかでの〈モノ〉代表、岸田劉生「壺の上に林檎が載って在る」は見たかった好きな作品。そして後期の土田麦僊「鮭之図」は切り身三切! 〈憑かれて〉代表は稲垣仲静「軍鶏」、凄みがあっていい*4。
風景の発見
第六章 揺らぐ近代画家たち 日本画と洋画のはざまで
萬鉄五郎「湘南風景」は画面からヤル気と有機が感じられる風景画。
岸田劉生「野童女」は寒山拾得スマイル、カメラ目線の麗子。中国の菓子入れを手にしている。赤い着物の描写を見つめていると、はっきょうしそうになる。「麗子肖像(麗子五歳之像)」の着物はどんな柄なのか知りたい。描表装でもある。
小杉放菴(未醒)、油彩でヤング「黄初平」。まえに東博で渡辺始興「黄初平図」(老後?)を見た*5。
近藤浩一路「京橋」既視感をさそう絵肌の光景。ひかれる。
川端龍子「龍巻」さかなまっさかさま。大画面、ダイナミックな水中魚介図だ。日本画でクラゲを見たのは初めてかも(除 博物図譜)。
雑感
テーマが〈近代〉ということで、江戸時代(近世)までの洋風画は無かったかのような雰囲気なのが気になった*6。
全体としては、とにかくウハウハの品ぞろえ。東京と京都の近美所蔵作品に他処の多様な作品を絡めて、最後まで目の離せない展示が繰り広げられていた。量も趣向も見応えあり、ありがとう近美!
絵葉書
所蔵作品の物件、他館発行の物件ともあり。カウントはしてないが二十件ほど? 後期のみ展示作品の物件も第一週から販売していた。値段は発行館によって異なる。
泥濘部屋に持ち帰りたい作品
*1:Modern Art in Wanderings: In Between the Japanese- and Western-Style Paintings
*2:http://www.mmat.jp/event/yamaoka/press.htm 目黒区美術館にて。
*3:この展テーマソングに決定。人間椅子『瘋痴狂』収録。先日(id:kashoh:20061021#p1)ライヴ演奏をきいて好感度三割増になった曲。
*6:来年の府中市美術館の企画展『海をこえた出会い―「洋画」と「洋風画」』が楽しみだ。『亜欧堂田善の時代』を見に行かなかったことを、すごく後悔している。
*7:id:kashoh:20061107#p2「クリーブランド美術館展」。
*8:http://www.mmat.jp/event/kawamura/press.htm 2005年、目黒区美術館にて。